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網膜硝子体手術

硝子体手術について

硝子体とは、眼球の中に詰まっているコラーゲン繊維と水でできた透明なゼリー状の組織です。網膜を引っ張ったり、出血や濁りなどで透明性が損なわれると視力低下を引き起こします。この変質してしまった硝子体を除去する手術が硝子体手術です。
硝子体手術で治療できる病気は、糖尿病網膜症、黄斑前膜、硝子体出血、黄斑けん引症候群、網膜分離、網膜剥離、黄斑浮腫など様々な疾患があります。
硝子体手術は、眼の硝子体と呼ばれる組織を除去し、網膜硝子体の病気を治す手術です。硝子体を強く引っ張ると網膜が破けてしまったりするため、とても繊細で難しい手術に分類されます。眼球の大きさは約23㎜、網膜の厚みは0.2㎜ほどであり、黄斑前膜ではこの網膜の上に張った厚さ0.003mmの膜を網膜を傷つけないように剥がすことを行いますので、正確な手術操作が求められます。
当院では局所麻酔(テノン嚢下麻酔)で行っており痛みを感じることは稀です。手術時間は1時間程度ですが、難しい症例では2時間以上にも及ぶこともあります。強膜に0.5mmの穴を3カ所開け、目の中を照らすライトと、眼球の虚脱を防ぐ灌流装置、硝子体カッターを刺して硝子体手術を行います。
硝子体カッターにより、出血や混濁した硝子体を切除して吸引除去します。また病気によっては、網膜上に張った膜を繊細な鑷子で除去したり、網膜をレーザーで焼き固めたり病変の処理を行います。

対応疾患

糖尿病網膜症

糖尿病で血糖値が上がると、全身の血管が傷つき、様々な合併症が起きます。網膜の血管が傷ついたり、詰まると、網膜出血が起き、網膜の血流が落ちます。血流の落ちた網膜を放置すると、新生血管が生じ、新生血管が破れて網膜に出血やむくみが現れます。出血や黄斑浮腫(網膜の中心のむくみ)が起きると、視力が低下していきますので硝子体手術の適応になります。手術で出血を除去したり、新生血管や増殖膜を処理し再出血を防ぎます。また、手術中に目の中から直接網膜にレーザーを打ち糖尿病網膜症の勢いを抑えることも同時に行ないます。

網膜前膜

加齢によって網膜に線維でできた膜が張る病気です。膜が黄斑と呼ばれる網膜の中心を引っ張ることで、物が歪んで見えたり、視力が下がったりします。硝子体手術で、網膜に上に張った膜を鑷子で摘んで剥がします。膜を剥がすと引っ張る力が無くなるため、網膜のシワが伸びて歪みが改善し、視力が回復します。長期間膜が張ったままにしておくと、網膜の視細胞が機能しなくなり、手術しても視力回復が限定的になることがあります。また、手術後視力が改善すると、今まで気づかなかった細かな歪みがよく見えるようになり、歪みの症状が悪化したように感じる方もいます。

黄斑円孔

加齢で硝子体が収縮する時に、網膜の中心である黄斑部に引っ張る力が働き、網膜の中心に孔(あな)が空いてしまう病気です。網膜の収縮が強くなる50−60代の方に多く見られます。黄斑円孔になると、視野の中心が欠けてしまうため視力が大幅に下がります。硝子体手術で硝子体の牽引をとり、黄斑部の周りの内境界膜を剥がします。さらに、目の中にガスを注入して手術を終了し、術後うつむきの安静を行うことで、黄斑円孔が閉鎖します。

硝子体出血

硝子体に出血が起きると、目の中に入ってきた光が網膜に届かなくなります。硝子体出血によって、目の中に濃い霧がかかったような見え方になります。出血量が少なければ、自然吸収され徐々に見えるようになりますが、出血量が多いと見えにくい状態が続くため硝子体手術の適応となります。硝子体出血が起きる原因は、糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症、網膜細動脈瘤破裂、加齢黄斑変性、網膜裂孔など様々な物があります。硝子体手術を行うと、網膜の状態が見えるようになるため出血の原因が判明します。硝子体手術を行うと、視力改善だけでなく、出血の原因を早期に診断できるメリットもあります。

黄斑浮腫

網膜の中心である黄斑部にむくみが生じ、物が歪んで見える・視力が落ちる、物がぼやけるなどの症状が生じます。原因となる主な疾患は、糖尿病網膜症、ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞症などが挙げられます。点眼や、ステロイドのテノン嚢下注射、抗VEGF硝子体注射で治療を行いますが、これらの治療でも治らない場合には硝子体手術を行います。網膜の内層にある内境界膜を剥がすことで、黄斑浮腫が治りやすい状態になるよう、目の中の環境を変化させます。

硝子体手術の流れ

1手術前の検査

診察を行い硝子体手術の方針になると、まず術前検査を行います。
角膜径や眼軸、角膜内皮細胞数などを測定します。また、採血を行い感染症のチェックや手術に支障となる全身疾患がないかも確認します。白内障があると硝子体手術がやりにくいため、軽度であっても白内障手術を同時に行うことが多いです。

2術前準備

手術当日、予定手術時間の1時間前に来院頂きます。手術前の飲食の制限は有りません。手術開始前より点眼麻酔を開始し、出来るだけ痛みを感じないように配慮しています。散瞳点眼を行い、目の周囲をヨード消毒液で清潔にして、無菌化を行います。

3手術室入室

手術室に入り、ベットに仰向けになり、顔に清潔な敷布をかけて手術開始します。手術中は、血圧や血中酸素濃度を測定し体調が問題ないか常に確認しています。リラックスできるBGMを聴きながら手術を受けていただけます。手術する眼は、顕微鏡の光で常に照らされているため眩しいですが、メスなどがはっきり見えることはありません。局所麻酔の手術に不安を感じる方は多いですが、医師・看護師が頭元に常に居ますのでご安心下さい。手術中に何かありましたら、お声を掛け下さい。手を止めて、その都度対処いたします。

4白目部分に手術機器を挿入

強膜に0.5mmの穴を3カ所開け、そこから硝子体にアプローチを行います。目の中には灯りが無いため、眼内を照らすライトを入れて明るくします。硝子体カッターを入れて硝子体を切りながら吸引しますが、吸引だけだと空気の抜けたボールの様に眼球が内側に凹んできます。眼球が虚脱しないように、灌流装置を付けて吸引した分だけ目の中に灌流液が補充されるようして、眼球を保ちながら硝子体手術を行います。

5硝子体を切除・処置

硝子体は網膜に付着していますので、下手に引っ張ると網膜が破けてしまいます。網膜を引っ張らないように、硝子体カッターで硝子体を細かく切断しながら除去していきます。硝子体を十分切除した後に、病変に応じて、膜を剥がしたり、網膜にレーザーを打ったり、ガスを注入したりと様々な処置を行います。

手術後の注意点

目を触らない

術後目に傷ができるため、充血や異物感、目やになどがあります。目を触ったり、擦ったり、抑えたりすると、感染や出血などを引き起こす可能性があるため触らないようにして下さい。

ガスを注入した場合は術後俯き安静を行う

硝子体手術終了時、通常は目の中は水になっており特別な安静は必要ありませんが、目の中にガスを注入した場合は、1−2週間の俯き安静が必要です。ガスを注入することにより、ガスが上に浮く性質を利用して網膜を支えます。俯き姿勢になると、網膜が真上にくるようになるため、よりガスの効果を高めることができます。他方、仰向けになるとガスによって眼内レンズが目の前の方に押し出されることで、眼圧が上昇し頭痛や角膜浮腫などといった合併症が起きる恐れがあります。ガス注入を行った場合は、術後1−2週間は俯き安静を行い、仰向けにならない様に注意して下さい。

医師の指示に従って点眼する

手術後は、炎症抑制と術後の感染症の予防のために点眼薬を処方します。術後合併症を予防するためにも指示通りに点眼して下さい。順調であれば、術後1ヶ月程度で点眼は終了できます。

硝子体手術の合併症

感染症

滅多にありませんが、眼の中に細菌などが入って増殖し、炎症が酷くなることがあります。深刻な合併症の1つで、速やかな眼内の洗浄、抗生剤の投与が必要です。手術後に良くなった見え方が急激に悪くなり、目の痛みなどの症状が起こった場合は早めの受診をお願いいたします。

出血(駆逐性出血・硝子体出血等)

出血量が少ない場合は自然吸収されますので経過観察を行います。出血が多く視力改善に乏しければ、出血を洗うために再度硝子体手術を行います。また、非常に稀にですが、手術中に眼内から大量出血し、顕著な視力低下を起こす駆逐性出血が生じる場合があります。

網膜裂孔・網膜剥離

手術中や術後に硝子体が収縮することで網膜裂孔が起こる可能性があります。網膜裂孔を置いておくと、網膜剥離へと進展することがあります。網膜裂孔であれば、外来のできるレーザー治療で治せますが、網膜剥離になると硝子体手術が必要になります。

緑内障・眼圧上昇

硝子体手術後に眼圧が上がり緑内障を発症することが時にあります。点眼で眼圧コントロールが可能なことが多いですが、緑内障になり点眼しても高眼圧が継続する場合には、緑内障手術が必要になることもあります。
特に重度の糖尿病網膜症の場合は、虹彩まで新生血管が伸びてくる血管新生緑内障となる可能性がありますので、術後慎重な経過観察が必要です。

充血・異物感

目に0.5mmほどではありますが、傷を作り縫合していますので、充血、異物感は必ずあります。ほとんどの方は、数週間程度で徐々に改善していきます。途中から症状が悪化した場合には感染や角膜びらんなどが起き、対応が必要なことがありますので、気になる症状がありましたら早めに受診して下さい。

硝子体手術の費用

手術内容 1割負担 3割負担
硝子体手術
(網膜付着組織を含むもの)
約38950円 約116850円
硝子体手術
(その他のもの)
約29720円 約89160円

※手術費用は保険適応となるため、負担割合によって金額は変わります。また、疾患によっても金額が変わります。
※生命保険等に加入している場合、手術に対する給付金支払いの対象となります。ご加入の生命保険会社にご確認ください。

高額療養費について

高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額が、ひと月(月の初め から終わりまで)で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。
ご自身が加入している公的医療保険に、高額療養費の支給申請書を提出または郵送することで支給が受 けられます。病院などの領収書の添付を求められる場合もあります。
ご加入の医療保険によっては、「支給対象となります」と支給申請を勧めたり、さらには自動的に高額療養費を口座に振り込んでくれたりするところもあります。どの医療保険に加入しているかは、保険証の表面にてご確認ください。

69歳以下の方の上限額
70歳以上の方の上限額