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小児の近視進行抑制

近視進行の現状

現在日本では、近視の人が増えてきていることが社会的問題となってきます。
文部科学省が裸眼視力1.0未満の学生の割合を毎年調査していますが、裸眼視力1.0未満の中学生は昭和54年では35.19%であったのが、平成29年では56.33%となっており、明らかに日本人の裸眼視力が低下してきていることがわかります。
海外でも近視人口が増加の一途をたどっており、近視進行抑制に対する治療研究が盛んにおこなわれています。
近視がとても強いと眼鏡やコンタクトレンズが必要になるだけでなく、将来黄斑変性や網膜剥離、緑内障などの目の病気になる可能が高くなります。
近視進行を抑制することは、裸眼視力が向上し眼鏡が不要となるだけでなく、生涯にわたって良好な視力を維持するためにも重要です。
残念ながら、進行してしまった近視を改善させる方法は現在のところありません。しかし、近年の研究で学童期に適切な治療を行うことで、近視進行を抑制する方法がいくつもわかってきています。適切な時期に適切な治療を行えば、近視になることを防げる可能性があります。当院では、近視進行抑制治療を行っておりますので、ご興味のある方はお気軽にご相談下さい。

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近視となる要因

近視の発症には、遺伝的要因と環境要因があると言われています。
遺伝的要因として、特にアジア人には近視が多いことが知られており、両親とも近視でない子どもに比べて、片親が近視の場合は子供が近視になる確率が2倍、両親が近視の場合には子供が近視になる確率は5倍という報告もあります。近年では近視に関連する遺伝子の解析も行われており、近視に関わる様々な遺伝子がわかってきています。
環境要因として、屋外活動や、近くを長時間見る近業の関与が示されています。現代人は、屋内での生活時間が長くなり、近くを見る時間も増えていますのでとても近視が進行しやすい環境と言えます。近くを見ることでどの程度近視が進行するかははっきりとした科学的データが乏しいのですが、屋外活動に関しては近視進行に強く関わっていることはよくわかっています。

屋外活動と近視の関係

現代人は屋外での過ごす時間が、極端に減少しています。
この生活環境の変化が、現代人の近視人口増加の一因となっていることが近年明らかになっています。
屋外に居ると明るい光刺激を常に受けます。この明るい光刺激を長時間受け続けることで、近視が抑制されることが多くの研究からわかってきました。
十分な明るさは、1000~3000Lux以上です。
例えば学校の教室内は340Lux、建物の影は3000Lux、木陰は7500Lux、夏の校庭は100000Luxですので、屋外であれば日陰でも十分な明るいです。
これまでの研究結果から、1日2時間以上の屋外活動を行うと、明らかに近医抑制効果があることがわかっています。
2010年に台湾で近視予防のために1日120分以上の外遊びを行う児童政策をしたところ、それまで増加傾向であった近視の学童の割合が、2012年より減少しその後も、毎年2%以上の割合で減少が継続しており、大きな話題となりました。
2019年より新型コロナウイルスが出現し、屋外活動がより今までよりも少なくなっていると考えられます。このコロナウイルスによる生活様式の変化で、屋外活動時間が短縮し、近視の子供が増えていることが、香港やイスラエル、日本でも報告されています。

近くを見ることと近視の関係

スマートフォンやタブレットの普及により、近くのスクリーンを長時間見る機会が多くなっています。
近くを見ると眼の調節力により手元にピントが無意識に合うようになっていますが、近見を継続すると、諸説ありますが、調節ラグや周辺部網膜のデフォーカスなどによって近視進行が促される可能性があります。しかし、近視を進行させる影響が小さいためか、科学的データで近視が本当に進行していることを裏付けるものはほとんどありません。
近視進行を促す可能性は否定できないことから、近くを見ることに関して現在推奨されていることは下記の内容です。

  • 1日120分以内
  • 連続時間は1回20分以内
  • スクリーンより30㎝以上眼を離す
  • 明るさを200Lux以上にする(室内の蛍光灯で300Lux程度)

近視進行抑制治療

今まで、近視の治療はあまり有効なものはありませんでしたが、近年近視進行抑制効果が高い治療法がいくつも開発されています。1日2時間以上の屋外活動、オルソケラトロジー、アトロピン点眼薬、特殊眼鏡、多焦点ソフトコンタクトレンズなどがあります。ほとんどの近視進行抑制治療は保険適応が無いため、自由診療の治療になります。それぞれの治療法の特徴について説明します。

オルソケラトロジーによる近医進行抑制効果

オルソケラトロジーとは、夜間に特殊なハードコンタクトレンズを装用することで角膜の形を変え、近視を改善させる治療法です。寝ている間にハードコンタクトレンズを装用し、朝に外すため、日中は裸眼で過ごせます。当初は、日中裸眼で過ごせるコンタクトレンズという位置づけでしたが、学童期にオルソケラトロジーを行うと近視進行が抑制されることが分かってきたため、近年大きな注目を集めています。レーシックとは異なり、角膜の形状を変化させる治療であるため、ハードコンタクトレンズの使用を中止すれば数週間で角膜形状は元の状態に戻るため安心です。
2010年頃より近視抑制効果の報告があり、他の治療法よりも長期データが充実しており、近視抑制効果がはっきり証明されている方法です。また、アトロピン点眼と併用するとより近視が進行しにくいことも多く報告されています。

アトロピンによる
近視進行抑制効果

2019年より香港にてLAMP studyという研究がされています。これによると、アトロピン点眼をした子供を3年間経過観察したところ、いずれも濃度でも近視の進行が抑えられている結果でした。近視が進行すると眼軸長と呼ばれる眼の長さがどんどん長くなってきます。図のように、アトロピン点眼を行うと、眼軸長が長くなるのが抑えられており近視が進んでいないことがわかります。この研究では、0.05%アトロピン点眼が治療効果が最も高いという結果でした。アトロピン点眼は、濃度が高いと動悸やまぶしさ、頭痛といった副作用がよく見られますが、0.05%までの濃度であれば安全であると報告されています。
現在、日本国内ではアトロピン点眼は近視治療としての保険適応はありません。
日本国内で入手可能な低濃度アトロピン点眼薬はマイオピン(0.01%、0.025%)です。
自由診療での処方となります。

特殊眼鏡による
近視進行抑制効果

通常の眼鏡には近視進行抑制効果はありませんが、特殊な形状にすることで近視進行抑制効果がみられるものがいくつか開発されています。
DIMSレンズと呼ばれる、中心9㎜は通常の眼鏡と同じ形で、周囲に遠視の度数を入れた直径1㎜の微小セグメントが埋め込まれた特殊な眼鏡があります。一部の光が網膜前方に焦点を結ぶため、常に近視性デフォーカスが形成される状態になます。網膜の前方に一部の光の焦点ができることで近視抑制を促す眼鏡です。この眼鏡を使用することにより、近医抑制効果があることが多く報告されており、中国や台湾、カナダでは近視抑制眼鏡として市販されています。
2020年にはEssilor社がStellestTMレンズを中国で開発し、こちらも網膜周辺部に近視性デフォーカスを作成することで近視進行抑制効果があります。
ヨーロッパでは、SightGlassVision社のD.O.TレンズがCEマークを取得しています。
これらの特殊眼鏡の近視進行抑制効果が強く、しかも眼鏡であれば低学年から副作用を心配せずに治療開始できるため、とても有効な治療法です。
しかしながら、現在のところ日本国内での販売許可は得られておらず、日本では使用困難です。

多焦点コンタクトレンズ
による近視進行抑制効果

2019年にはその有効性の高さから、アメリカFDAに認可され、海外では近視進行抑制ソフトコンタクトレンズとして正式に市販されています。
日本国内では、シードからEDOFが、大人用の1dayソフトコンタクトレンズとしては販売されています。小児の近視進行抑制治療用として販売されているわけではありません。
日中にソフトコンタクトレンズを使用する必要がありますので、低学年の児童には、日々の管理のハードルが高いことが問題です。